一発逆転の不動産購入
すがすがしい透明感をもつ建築群だ。
誉め過ぎかもしれないが、イタリアのミケルッチによるフィレンツェ駅(岳謡)やマッゾーニらによるローマ駅が与える建築的な感動を国鉄の民営化は、ポストモダンの導入と符合している。
民営化以後、最大の建築的なイベントは京都駅だろう。
一九九〇年、コンペの要項が発表され、A藤忠雄やK川紀章らの建築家が参加し、メディアでも注目を集めたが、翌年にH広司が設計者として選ばれた。
竣工は九七年である。
正確にいえば、京都駅では思いだす。
地震国の日本では、どうしても柱を太くしないといけないというハンディをのりこえ、国鉄建築はモダニズムのハードコアに肉迫している。
国鉄建築の歴史において、T野金吾のような建築家が関わることは、むしろ例外的である。
ほとんどの駅は、各地の鉄道管理局や工事局の建築課が設計したものだ。
二〇世紀の中頃であれば、国鉄の建築職員は七〇〇〇人ほどいたらしい。
だが、匿名とはいえ、決して手を抜かず、高い志をもって設計されている。
T下健三やM川園男のように著名なモダニズム建築家ではない。
ゆえに、当時の建築雑誌をめくっても、ほとんど登場しない。
それこそ「プロジェクトX」ではないが、無名の男たちによるモダニズムの底上げとして国鉄建築は再評価に値するのではないか。
なく、京都駅ビルだが、あえて原は「京都駅」として設計したという。
メディアは六〇メートルという京都の高さ規制ばかりを話題にしていたが、京都駅の本質は高さではなく、その異常な長さにある。
五〇〇メートル近くに及ぶ、敷地の条件を生かして、巨大な階段を内包するアトリウムをつくり、上部では空中回廊が走る。
その結果、広場が成立しないといわれる日本に、真に都市的な広場を与える試みとして成功している。
いかにも原らしい、きわめて未来的な大空間だ。
しかも彼は「鉄骨の構造の大空間が駅らしい駅という意味」において、一九世紀のヨーロッパの駅も意識している(「新建築」新建築社九七年九月号)。
なるほど、駅を改築したオルセー美術館の中央を貫く吹抜けのコンコースとも似ていよう。
京都駅は、きわめて密度の濃いデザインのポストモダン建築であり、H広司の代表作だろう。
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